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Wednesday, October 10, 2007

ある現地人つづき

 彼は離婚直後に元ヨメが再婚したことを知り、失意の中で、このままではやけになって花火師の道に陥る恐れを感じたという。そこらの市場で普通に安価でさまざまな花火が売られていて、いつでも手軽に花火を上げられるこの環境の中にいてはよくないと、出国を決意。花火の盛んな中、陸路、隣国に向かったという。そこでは、4人2組体制でひたすら鶏肉をさばきまくる仕事を得て3ヶ月と18日間、働きまくったという。帰国してしばらくしたところでここの仕事を得たらしい。
 この国では、家事は女の仕事、という意識の人間がほとんどで、ここのスタッフもほとんどがそうした考えを持っている。当然、家事の手伝いもしていないので包丁の使い方も全く知らなかったりする。大工仕事のような力仕事など、ここでは男の仕事とされていることはほとんどの男ができて、連中はそのことを自慢している。金を稼いでくるのも男の仕事で、家族に食わせてやれないようでは男ではない、という社会である。
 あるスタッフはしばらく前、金がないことをヨメに責められ、頭に来てひっぱたいたところ実家に帰られて、子どもに会えない困った困ったと言っていたが、ヨメも働けばいいのに、と私が言ったら、とんでもない、それは男の仕事だ、と強がっていた。この男がたとえばせめて家で料理くらいしていれば料理人の仕事が見つかるかもしれないのだが、とんでもない、それは女の仕事だ、といってやらないので、結局つぶしのきかない男ができあがる。みんながみんなこんな調子で、できることも同じなので、コネでもなければそんな奴のところに仕事はこない。このスタッフは掃除人だったが、キッチンスタッフがごっそり去った際に運良く緊急的にキッチンスタッフに異動し、給料も1.5倍ほどになったが、そんな運は長くは続かない。
 さて、本題の料理人はこの国ではめずらしく、家事はヨメといっしょにやっていたという。自分が仕事で忙しかったり、病気にでもなったらヨメが働けばいいし、逆なら逆で自分が働くし家事もやる、と彼は言う。ヨメが家の中で家事ばかりやっていたら頭が固くなってよくない、といい、仕事を持っている女性の方が話も面白いしお互い刺激しあえてよいよな、という私の話にも同意している。頭が柔らかいかというと、しょうもないイスラム戒律でがちがちだったりもするのだが、仕事には熱心だし知らないことを知ろうとしたりはするので、いろいろと話をするよい相手になっている。
 彼は、知ってる知ってる、できるできる、といいたがる傾向があり、この点がよろしくない。前に友人が、2000米ドル払えば近隣の国の大都市で何かのプロモーション映像に歌い手の一人として参加できるという話を持ってきたが、金がないので残念ながら断った、といい、出ていればそれを見た人からスカウトが来てそのうちビッグになれるのに、という夢物語をしだして、私は、お前、それインチキだろ、とは言っておいたが、彼は、俺は歌も歌えるのだ、と言って笑うだけであった。堅実なタイプなのか何なのか分からないところがあり、小金を稼いでだまされてすっからかんになるくらいなら、今のようにかつかつのままでいたほうがいいんじゃないか、などと、彼の作った夜食を食いながら私は思った。

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Monday, October 08, 2007

ある現地人

 私と同じころにここに就職し、今も働いている24歳の現地人料理人は、産まれてまもなく母が死に、数年後には父も死んで、かなり苦労してきたらしい。本人も、産まれてまもなく発熱し、ヤブ医者に注射されて下半身が不自由になって長く車いす生活をしていたが、少しずつリハビリを続けて今では歩くことはできている。8歳の頃に南部を中心に全国で展開された花火世界大会で、あまりに大きな音で耳をやられ、今でも左耳がやや聞こえにくいという。ストーブに給油中に引火して右腕に大やけどを負うなど、人生災難の連続である。
父は母が死んですぐ再婚したが、継母が非常に厳しく、今でも料理人が家に帰っても金を持っていかないと追い出されるといい、彼は父も母もいないし住むところもない、と言っている。ここの仕事が終わったらホテル暮らしをしなければならず、ここに寝泊まりして稼いだ金をホテルに寝泊まりして使っちゃうことになるのか、と苦笑いしている。
 19歳で結婚したころ、3歳年下のヨメと市場で買い物中、チンピラがヨメにぶつかってきて、謝りもせずにへらへらしている態度にヨメが激怒し、ムスリマがかぶるヒジャーブを捕まれないよう脱ぎ捨てて身構え、なんだその態度は、と怒鳴りつけたという。彼女は子どものころに空手と体操を習っていて、かなり強気らしい。料理人が間に入ったが、相手は5人組で殴りかかってきたので、そこらにあったリンゴなどを投げつけ、秤に使う重り4kgなどをつかんで身構えたところでこう着状態になったのでそのまま去ろうとしたが、ヤジウマがナイフ、ナイフ、と叫ぶので振り向くと、1人がナイフをつかんで飛びかかってくるところだったので、横にあったバナナの木箱を振り回して振り払い、さらにそばに立っていたパラソルを引き抜いて振り回し、面打ちを食らわせたところ、相手の額が割れて出血し、そのまま倒れて気を失ったという。そこへ警察が来て、料理人は、相手が5人組でナイフまで持っていたと訴えたが、ナイフが見つからず、ほかの4人も逃げ去っており、彼だけが罪を問われ、結局、新婚にして1年半の牢屋生活となった。
 その間も別れずにいた仲のよい夫婦だったが、料理人はそのころ仕事がなく、刑期を終えてシャバに戻ってからも蓄えを食いつぶすだけの日々で、ヨメの友人や親せき連中は、ヨメが腕輪や指輪などアクセサリーを買ってもらえていないのを笑い、こんな結婚やめたほうがいいとさんざんバカにし、ヨメは日々泣いていたという。そのうち蓄えもなくなり、今日明日食うものにも困る状態となって、料理人は離婚を決意。隣国ででも働いて金を稼いで戻ってくるから、また結婚しよう、それまで再婚なんかするなよ、と言って別れたというが、その一週間後には元ヨメが再びヨメに出されたことを知り、この間産まれていた一人息子もつれていかれて会うこともできなくなり、料理人は失意のどん底に陥ったという。約1年半前のことである。
 その後、ロバでの荷車運びなどをして食いつないできたところ、ここの仕事を見つけてようやく安定した職を得た。キッチンスタッフがごっそり去った際も、自分まで去ったら大変だろうと思って残ったといい、チーフが来なくてやたら仕事の多い私の状態を見てヘルプに回ってくるなど、仕事にも意欲が出てきているところである。
 ラマダン中で元ヨメと息子が実家に帰ってきたと聞き、料理人は先日、一日だけ特別に休暇をとって会いに行ってきた。元ヨメの実家はいまでも料理人を家族のように扱ってくれるらしい。久々に会った息子は5歳になっていて、よくしゃべる元気な男の子になっていたという。ヨメとは話さなかったが、なぜかその後携帯に電話が来て、再婚後の生活を聞かされたらしい。再婚相手は年のいった男で、二度の交通事故やケンカなどで体中キズあとだらけで、日々飲んだくれているといい、連れ子を何かといえばたたき、はり倒すなどひどい仕打ちをしているという。元ヨメは、もう一人ヨメをもらうから実家には黙っていろよ、というようなことを言われ、うんざりして離婚を考えているという。料理人が仕事を見つけてちゃんと生活していることを知り、また元に戻りたいと言っているらしい。
 金がなければ去って、あると思えば戻るってのはよくないんじゃないの、と私は言ったが、料理人は、子どもといっしょに暮らしたいし、子どもを間に父と母に戻ればいずれまた近づいていけるだろう、と子のかすがい効果を期待しているようだ。つい先日まで、礼拝に行った先で知り合った女子大生と毎晩長電話して、いずれ結婚しちゃうかも、とか言っていたが、今では、金があったら二人目にする、とさらにチョーシに乗っているので、元ヨメに走ろうとしてることを知ればどうせあっさり去るだろうと言っておいた。
 ここの仕事が近いうちに終わるということを元ヨメに話していないといい、そりゃまずいだろと私は言ったが、ここで稼いだ金は使わずにちゃんとためているし、今度は前みたいに仕事がないからって何もしないでだらだらするだけの生活はしない、と彼は決意を語った。

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Tuesday, October 02, 2007

ストコイコイ

気がつけば早くも10月だが、いつものごとく給料が来ず、現地人は今日、3日以内に来なければストに入るとチーフに通告した。先日通貨の話を書いたのも連日給料の話をしていたからだが、先月、今月の給料がどうなるのか、彼らはかなり神経質になっている。
 ここの職場が今月いっぱいで終わるのか、もう2、3ヶ月続くのかが5日に分かるらしい。ここの客である会社が仕事相手との契約更新についての会合をもつ日らしく、そこですべてが決まるらしい。我々の社長はこれを見守る体勢と思われる。契約が続くようならば現地人の給料を払ってこれまで通りレストランを経営しようとするだろうが、問題は続かない場合だ。
 月末でこの職場がなくなるならば、現金で支給される現地人は受け取る場所を失うことになる。社長は9月分の遅配も10月末までなんとか引っ張って、2ヶ月分を未払いにする腹ではないか、という読みがあることは前に書いたとおりである。現地人がストに入ろうとも、どうせ契約が切れるのだから客が怒っても怖くもなんともない、と考えているのではないか、と思われる。3日以内に送らなければ、という現地人の通告はそこまで考えてのことかどうか分からないが、彼が次の行動を決める重要な日時である5日の前に期限を設定したのはよい作戦だったと言えるだろう。
 客の業者は3ヶ月ごとに契約金を払っていて、それもまとめてすべては払わず、4分の1か3分の1は後払いになっているという。社長はこの額と、2ヶ月分の給料と食材調達費の合計を比べて判断するのではないかと思われる。食材も底をつきかけているが、今月で終わるならば社長はトラック輸送はしないだろう。しかしすべて現地調達となると割高になるので、今月の食材費はこれまで以上になるはずだ。さらに、チーフが言うには彼も4ヶ月遅配で、私は3ヶ月半ちょっと遅配なので、すべて足すと20000ドルは軽く超えることになる。これは予断を許さない数字である。
 客が社長を通さずに給料を払ってくれればいいのだが、それは契約外の行為なので通常は難しいだろう。そもそも問題はチーフも私も3ヶ月以上の遅配でも働いていることだ。客にとって大事なのはレストランが契約通り営業されているかであって、そこの従業員が給料を受け取っているのかいないのかは問題ではない。彼らは同情こそしているかもしれないが、何も困っていないので何も行動は起こさないだろう。しかし、ここの労働者の持つ唯一のカードであるストをうてばレストランが営業されず違約行為となるので、客は社長に対して抗議もするだろうし違約金の請求もするかもしれない。これまでもストでしか労働者側は戦えなかった点は同じだが、社長が契約違反の恐ろしさを分かっていない恐れがあるので、それを知らしめる必要がある。
 なんと言っても、まだ見ぬストをぜひ見たいと私は願っているので、なんとか連中をたきつけてストをうたせたいと画策しているところである。

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