今日この頃
ちょっと前の話なのだが、「きっこの日記」というブログをめぐって、ネット上にカメラマンの梅基さんの名前が出ていた。彼とはその後会っていないし、この日記の話とかそれにまつわる彼の話は詳しく知らないし、ここで触れる気もないので、知りたい人は自分で調べてほしい。
梅基さんの話の中で、「彼は人間の盾であった」という記述がネット上であちこち書かれている。私が彼と初めて会ったのは2003年3月22日の開戦直後のバグダッド、フラワーズランドホテルだった。書かれている通り、「人間の盾」ビザを取って入国したようだ。その後浄水場に入ったピースオンのやっちらと車をシェアしてバグダッドにたどり着いたと言っていた。
彼は翌日、ムスリム記者の常岡さんと私と一緒にイラク軍施設周辺で撮影中にイラク軍に捕まり、スパイ容疑をかけられたということは彼自身が当時契約していた週刊ポストに書いたようだ。その際、3人ともビザが「盾」だったために、イラク政府側から「盾」施設に入るか、出国するかと迫られ、梅基さんは出国を決めた。イラク情報省は、彼が途中でばっくれないよう、タクシーを手配し、乗り込むまでスタッフが同行し、運転手にちゃんとイラク外に連れ出すよう厳命するという方法で、24日、事実上の強制退去をさせた。彼は実際にそのまま出国したもようだ。
彼を「人間の盾」だったとか、ばりばり活動をしていたとか書いているサイトがあるが、彼はビザが「盾」だっただけで一度も「盾」活動には参加していない。そうしたサイトでは「きっこの日記」が事実を書いているのかとかいろいろ評価をしているが、自分らの書いている内容自体が事実関係ないがしろなので、まあ自分らのいい加減さを考えれば「きっこの日記」もいい加減に違いないという感覚で書いているのだろう。
ひょっとしてこのネタで流れてくる人もいるかもしれないので改めて書くと、ビザなど取材のための現地入りの手段に過ぎないので、ジャーナリストビザかそのほかかなど費用や入ってからのメリットなどを考えて最適なものを選ぶだけのことである。場合によってはビザなしでもぐりこむ人もいる。フリーの記者やバックパッカーなんてそういう感覚の人がほとんどで、「何があってもほっといてね」と彼らの多くが口にするのはそういう考え方も背景になっているわけだ。そもそも取材後に発表できなかった場合は事実上はジャーナリストの仕事をしたことにならないわけだし、バックパッカーだけでなく商売の人だって本でも書いてしまえばジャーナリストのようなことをしたことになるのだから、事前にとるビザなんてなんだっていいではないか、というのが私の感覚である。もうちょっとちゃんとした理屈でいくと「悪法も法なのか」という問題になるのだが、ここではそこまで踏み込まない。
2003年には東長崎機関の掲示板で「盾」批判が盛り上がっていたが、その中で「ジャーナリストならジャーナリストビザを取るべきだ」という指摘がかなりあった。ビザとは発給する政府による外国人管理システムなのだから、こうした書き込みは要するに「ジャーナリストならフセイン政権の管理下に入るべきだ」とか、もしくは「フセイン政権にジャーナリストと認められた人間しか自分はジャーナリストとして認めない」とか、あるいは「どんな状況にあろうとどのような法律にも従うべきである」という順法精神ごりごりの主張のいずれかであろう。
いろいろ考えていくと、これは「とにもかくにもフセイン政権に従うべきだ」という主張だったわけで、書き込んでいるのは、「盾」ビザジャーナリストをピース野郎として毛嫌いしていた人たちというよりは、むしろイラクの法律に従わない犯罪者として糾弾していた超サダム信奉者たちということになる。または、とにかく戦争反対なのでイラクの政府絶対尊重、という人たちか。内ゲバは左翼系の真骨頂だし。ということで、フセイン政権の工作員かピース系による合同サイバー攻撃だった、というまとめでよろしいかな。それにしても、ビザすら持たずに不法入国した米軍従軍記者への攻撃がなかったのは、いったいどうしたことだろう。


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Comments
批判のための批判があまりに多いですね。感情ぬきの議論に慣れてないかも。
Posted by: 速水 | Wednesday, March 01, 2006 at 08:55 PM
安田様
あとでいろいろ調べてみますけど、私もJビザを取らず、取材をしたことは多々あります。会社員だけど。上司には事後報告しますよ、もちろん。日本の新聞社のような「保護政策」がない英字新聞ですからそれほど厳しくはないのでしょうが、きっちり怒られたことも何回か
状況によってJビザを取らないほうがよい場合がありますよね。個々のケースは書き連ねませんけど
アメリカの従軍記者、というよりエンベットですよね。従軍記者というのはキャパのような人々で、エンベットは広報担当ですよね。ラムズフェルドの作戦の一つだった”ジャーナリスト”。まあ、これは宣伝係りなので、アメリカ軍が「仲間です」=「兵隊です」と連れてくればいいのですが、例えばホワイトハウスにのこのこ行って「スキャンダル教えてください」というアメリカの記者を見たことありません。つまり、許可があるかないかではなく、結果の重さを考えたとき、過程を飛ばすということは必要です。自分が生きて帰ってくるのと同じくらい。だって報道だから。正々堂々の意味、取り違えると大変ですよ。ピュアとか、ナイーブなんていうのはバカにされていることですからね。まとまらないのでまた書きますけど、とりあえず
Posted by: 沢宏子 | Wednesday, March 01, 2006 at 11:11 PM
イラク戦争当時も大手メディアが他紙記者のビザの種類を問題視してましたし、こうしたサイトの書き込みのような反応があることを考えると、大手メディアとしては表向きだけでも過程を「正々堂々」なものにせざるを得ないでしょう。
志とか過程に注目して結果から話題をそらすのが日本社会の特長とも言えますので、それを踏まえた行動は必要でしょうね。今回のエントリーのように、わざわざ過程を暴露すること自体がナイーブなことでした。シレッと結果だけ出しておけば十分ですから。眉間にしわ寄せる練習くらいはしておくべきですね。
まあ私個人としては技術論に大変興味があるので戦場インチキ取材話は大好きです。故橋田さんのビザカラーコピー話を聞いたときは感動しました。
Posted by: 安田 | Thursday, March 02, 2006 at 08:36 PM
恐らく、報道機関の組織的問題もあると思いますよ。
新聞社では、外信部だと「ノービザ、当たり前じゃん」の世界ですが、社会部、政治部では違いますから。ビザ問題で批判記事を書くとしたら、海外取材と縁遠い部署でしょう。
インチキ取材ですが、ヒマな時に架空通信社を造っておいた方がいいですよ。ビザ問題をクリアしやすくなります。かつて、IP通信社、αプレス、IPS通信社など怪しげな報道機関が川崎や八王子に創設されたものです。今度は、池袋本社になるわけですね(笑)。
Posted by: けんたうろす | Friday, March 03, 2006 at 11:56 AM
去年、適当な架空通信社名でイラクビザを申請したのですが、あっさり蹴られました。金かかるけど登記でもしておいたほうがましなんでしょうかね。
Posted by: 安田 | Friday, March 03, 2006 at 09:20 PM
僕が、架空通信社オーナーだった頃は、登記の必要などありませんでした。プロのデザイナーに作らせた記者証、レターヘッドだけです。なんと、NY支局もあったし、ナイロビ支局まで。
ユーゴ紛争の頃でも、WEBにそれらしい会社を立ち上げておけば済んでいます。友人の某新聞社カメラマンも似たようなことをやってたりしてw
http://www.imcnews.com/
東長崎機関も、通信社として利用できるかと思いますよ。ついでに、就職希望の女子大生からもメールが来たりしますよw
ただし、中国などでは、かえって話がややこしくなるはずです。
Posted by: けんたうろす | Saturday, March 04, 2006 at 12:27 AM
おお!カラーコピー事件(?)は有名ですけど、架空通信社、、、、すいません、ナイーブはこちらでした。私はお二人を凌駕する何かをつくります。今まで一番入りやすいのは怪しいNGOでしたので。アジア女性を目いっぱいアピールし(バカなふり、ともいう)、きっちりした西洋の方々と一線を画し、「わあ、さんきゅう、さんきゅう」と英語をしゃべれないフリをしていると9割の確立でビザゲットでしたね。係官が女性だと失敗していましたけど、、。それだけ甘い場所しか行っていないともいえますけど、ハイ
Posted by: 沢宏子 | Saturday, March 04, 2006 at 09:24 PM
さんきゅう、でいいのです。
ついでに、パスポートにエロいポートレートを挟み込んでおくことです。
検問などでハケーンされた時には、「自分のGF(BF)です」と言えば効果的。その際には、あ、見られてしまった、恥ずかしい、という表情を忘れずに。
Posted by: けんたうろす | Wednesday, March 08, 2006 at 12:55 AM
架空通信社といっても、フリーがどこかに売り込んで掲載されれば、やっていることは大して変わらないですしね。中東などフリーという存在自体が理解されてないので、どこかの組織に属しているふりくらいはしないと。
しかし、イラクの場合は日本外務省に問い合わせくらいしてそうですね。NGOも登録制ですし。
エロポートレートですか。相手がアルカイダ系だったら刺されそうですねえ。写真なくても同じか。
Posted by: 安田 | Wednesday, March 15, 2006 at 03:21 AM
架空通信社であろうと、一度クレジットが掲載されれば立派な通信社であります。90年初期の写真週刊誌には、IPS通信社のクレジットが輝いています。本社はNYなのに、やたらと九州発ばかりでした。
ま、イラクでは通用しないでしょう。というか、ビザなしでOKのようですね。
綿井さんが、バグダッド入りしました。わが事のように興奮しますね。
Posted by: けんたうろす | Wednesday, March 15, 2006 at 07:50 PM
ビザなしでバグダッドまで行けるんですね
いったいどういう体勢組んだのか
今の状況でどこまで動けるかですね
しかし、楽しそうですねえ
こちらもなんとかしないと
Posted by: 安田 | Wednesday, March 15, 2006 at 09:38 PM